AFMは走査型プローブ顕微鏡と呼ばれる装置の一種で、鋭利な探針を試料表面に接近(引力モード)、あるいは接触(斥力モード)させることで、表面の構造だけでなくその物理的特性も同時に測定できる分析装置です。
図1に示すようにカンチレバー先端の探針が試料表面に接近すると、原子間力の働きにより探針が試料側に引き寄せられ、たわみが生じます(引力モードの場合)。このたわみはレーザーによって検知され、カンチレバーと試料表面の位置関係を保つための変位制御に用いられます。探針で試料表面を走査した際の変位を記録し、試料の表面構造を調べるのがAFMによる分析です。
測定モードによって試料表面に常に接触する(コンタクトモード)、表面近傍で振動する(タッピングモード)などカンチレバーの動作は異なり、表面構造のほかにも硬さを反映した位相像の取得や走査範囲の表面粗さの算出も可能です。ご依頼の場合、ご不明点がある場合はお気軽にお問い合わせください。
図4はシリカをゴム中に分散させた試料の位相像です。画像解析により、ポリマー中のフィラー粒子の数量や面積に基づいて粒径分布を求めることができ(図5)、分散性評価に適しています。
図6は位相像と高さプロファイルを合成し、フィラーの分散状態を三次元イメージとして描写した例です。熱可塑性エラストマー中でカーボンナノチューブが配向している様子が認められました。
図7は算術平均粗さ(Ra)の算出を目的とした測定結果です。キセノンウェザーメータを用いて過酸化水素水噴霧条件下で100時間暴露したABS樹脂板表面のRa値は、45.96 nmでした。AFMを用いることで、通常の表面粗さ測定器では測定できないnmオーダーの表面粗さが測定可能です。