短期発がん性予測システム;CARCINOscreenRは、長期間の投与と膨大な費用のかかる化合物の発がん性試験に関して、短期間(最大で28日間)投与されたラットの肝臓における遺伝子の発現変動をマイクロアレイで測定し、発がん性予測用にカスタマイズされた遺伝子群の発現量に基づき早期に化合物の発がんリスクを予測するものです(図1)。
【適用範囲】
動物系統 | Crlj:CD (SD)ラットもしくはF344ラット、雄 |
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標的臓器 | 肝臓 |
群構成 | 3匹以上/1群 |
用量 | 溶媒対照群+2用量以上 |
投与経路 | 強制経口投与 |
投与期間 | 14日間もしくは28日間 |
マイクロアレイ | ・Whole Rat Genome Toxplus (Agilent、カスタムアレイ) ・Rat Genome 230 2.0 Array (GeneChip®; Affymetrix) |
短期発がん性予測システム;CARCINOscreenRの特徴は以下のとおりです。
# | 動物系統 | 投与期間 | マイクロアレイ | 特徴 |
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(1) | F344ラット | 28日 | Toxplusアレイ*2 (Agilent社) |
網羅的遺伝子発現解析も同時に可能 |
(2) | SDラット*1 | 28日 | 一般毒性試験での汎用系統に適用 | |
(3) | F344ラット SDラット*1 |
14日 | GeneChip® (Affymetrix社) |
より短期の動物試験、トップシェアのアレイに対応 |
*1:Crlj:CD (SD)ラット
*2:Whole Rat Genome Toxplus (Agilent、カスタムアレイ)
各受託メニューの概要について以下に説明します。
本発がん性予測メニューは、F344ラットを用いた動物試験に適用できます。遺伝子発現量測定にはWhole Rat Genome Array Toxplus(以下Toxplusアレイ)を用います。このToxplusアレイは発がん性予測のためにカスタマイズされた予測遺伝子群に加え、Agilent社の市販ラット全遺伝子(Whole Rat Genome Arrayに搭載の約40,000遺伝子)を搭載したもので、発がん性スクリーニングのみならず、その他の毒性や薬効に関する網羅的遺伝子発現解析が同時に実施できます。
本発がん性予測メニューは、毒性試験の汎用系統であるSDラットへ適用範囲を拡大した予測システムです。遺伝子発現量測定にはToxplusアレイを用います。適用性の確認に際しては、F344ラットで既に検証済みの13物質で比較検討を行いました。その結果、ラット肝発がん物質はすべて的中し(9/9物質)、非変異発がん性物質も高い確率で発がん性を予測することができました(表2)。全体では13物質中11物質が正しく予測できたことから、本システムはSDラットの肝臓サンプルについても適応可能と判断しました。
物質 | 既知情報 | 発がん性予測結果 | |||
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発がん性 | ラット肝 発がん性 |
変異原性 | F344ラット | SDラット | |
2,4-Diaminotoluene | + | + | + | 発がん | 発がん |
Methyl carbamate | + | + | − | 発がん | 発がん |
Thioacetamide | + | + | − | 発がん | 発がん |
Urethane | + | + | − | 発がん | 発がん |
D,L-Ethionine | + | + | − | 発がん | 発がん |
Chlorendic acid | + | + | − | 発がん | 発がん |
Clofibrate | + | + | − | 発がん | 発がん |
Di(2-ethylhexyl)phthalate (DEHP) | + | + | − | 発がん | 発がん |
3-(p-Chlorophenyl)-1,1-dimethylurea | + | + | − | 発がん | 発がん |
Di(2-ethylhexyl)adipate (DEHA) | + | − | − | 発がん | 非発がん |
2,6-Diaminotoluene | − | − | + | 非発がん | 非発がん |
2-Chloromethylpyridine HCl | − | − | + | 非発がん | 非発がん |
Iodoform | − | − | + | 非発がん | 発がん |
本発がん性予測メニューは、より短期間の14日間投与の動物試験に適用できます。また、遺伝子発現量の測定にはGeneChip®を用いています。予備試験(用量設定試験)などで取得した肝臓サンプルを本予測メニューに適用することが可能になります。既に取得されているGeneChip®データを本予測メニューに適用し、これまで取得したデータを有効活用することもできます。
本機構ではCARCINOscreen®で発がん性予測を行うのに必要な動物試験、マイクロアレイ測定、そして、マイクロアレイデータを用いた発がん性予測の一連の作業を実施することができます。一方、自社内で取得された動物試験の臓器サンプルをご提供いただき、マイクロアレイ実験より承ることも可能です。さらに、GeneChip®及びToxplusアレイを用いた遺伝子発現データの測定まで自社内で実施され、マイクロアレイデータのみご提出いただくことでも対応しています。お気軽にご相談ください。
【受託解析の流れ】
1) 解析プランのご提示 | お客様のデータ解析目的や実験系に応じたプランニングを行います。 |
2) お見積書の作成 | 解析プランに沿ったお見積書をご提示します。 |
3) お客様からのサンプルもしくは データファイルの送付 |
受託解析をスタートされる試験項目に応じて、被験物質、組織(RNA later保存)、total RNA、データファイルをご送付ください。 |
4) 動物実験/アレイ実験/発がん性予測 | 解析プランに沿った実験を実施します。 |
5) お客様への解析データ納品 | 実験ごとに報告書を作成するとともに、各種データをお送りします。 |
※ 必要に応じてお客様とのDiscussionを行います。
報告書(印刷物)以外に以下のデータを電子ファイルとして納品します。なお、報告書の記載内容には(要約)、目的、方法、結果(考察)を含みます。
納品物 | (1)試験報告書(PDFファイル) (2)画像ファイル(TIFFファイル) (3)予測スコア等出力ファイル(Excelファイル) (4)遺伝子ネットワーク図(JPEGファイル) |
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納期 | お問い合わせください。 (ご依頼内容及びご依頼時期によって決定します。) |
本解析の価格に関しましては、本機構までお問い合わせください。
お問い合わせ先はこちら。
本機構(CERI)は、NEDOのトキシコゲノミクスプロジェクト* (リーダー:名古屋市立大学 白井智之教授)に参画し、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析に基づく短期間・低コストの発がん性予測手法を開発しました。また、当プロジェクトで取得したマイクロアレイデータはNCBI (National Center for Biotechnology Information;米国立生物工学情報センター)のGEO (Gene Expression Omnibus)データベースに登録していますので、ご興味のある方は右記のリンクをご参照ください(3日間投与後データ、14日間投与後データ、28日間投与後データ)。
本研究成果を基にCERI独自の取り組みによって短期間かつ高精度に予測可能な発がん性スクリーニング法;CARCINOscreen®(商品名:カルシノスクリーン)として実用化し、2010年度より受託解析を開始しています。
*独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) 受託事業
-「高精度・簡易有害性(ハザード)評価システム開発」プロジェクト(平成13年度〜17年度)
-「高機能簡易型有害性評価手法の開発/遺伝子発現解析技術を用いた発がん性予測手法の開発」プロジェクト(平成18年度)