SP値(Hildebrand溶解度パラメータ:δ)とは、凝集エネルギー密度の平方根で定義される物性値であり、溶媒の溶解挙動を示す数値です。このSP値を分散力項(δD)、極性項(δP)、水素結合項(δH)の3成分に分割して物質の極性を考慮したパラメータがHSP値(Hansen溶解度パラメータ)であり、両者の関係は「δ2=δD2 + δP2 + δH2」で表されます。
HSP値(δD、δP、δH)の値を三次元空間の座標と考えたとき、対象となる物質のHSP値と溶媒のHSP値が近いほど、溶解しやすい傾向があります。
SP値及びHSP値は物質の溶解性の評価以外にも、高分子材料の耐溶剤性評価、医薬品の溶解性評価、溶媒中の微粒子の凝集・分解性評価など、様々な分野で注目されています。
・有機化合物
・樹脂
・分子構造不明の有機化合物
・加硫ゴム
本機構ではHansen球法により試料の溶解度パラメータを求めています。
@対象となる試料を、溶解度パラメータ既知の溶媒に混合し、溶解したか否かを判別します。
(加硫ゴム等の溶解しない試料は、膨潤や軟化、クラック発生を元に溶解度パラメータを計算します。)
A溶解性試験の結果を、溶解度パラメータ(δD、δP、δH)の三次元空間にプロットします。
B溶解した溶媒の座標を含み、溶解しなかった溶媒の座標を含まない球(Hansen球)を求めます。
この球の中心座標は試料の溶解度パラメータ、半径は試料を溶解させる溶媒の範囲を表します。
フッ素ゴム(FKM)のHansen溶解度パラメータ
FKMのHansen球と主要な溶剤の関係
なお、サンプルの性質によっては、実験的にHSP値を求められない例も存在します。化学構造式が判明している物質のHSP値については、計算による算出も実施しております。
HSP値を用いることで、混合溶媒の溶解度パラメータを予測することができます。
・試料を溶解できる実用的な溶媒が見つからないので、混合溶媒を用いたい。
・二種類(以上)の混合溶液に浸せきした場合の試料の耐久性を予測したい。
等の目的がある際に有用となります。