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X線吸収微細構造 (XAFS) 法を用いた化合物の化学状態評価

  1. X線吸収微細構造 (XAFS) 法を用いた化合物の化学状態評価

X線吸収微細構造 (XAFS) 法を用いた化合物の化学状態評価

 X線吸収微細構造(X-ray Absorption Fine Structure, XAFS)法は、物質によるX線の吸収の度合いを観測するX線吸収分光法の一種であり、対象元素の吸収端近傍でエネルギーを変えてX線を照射することで得られるX線吸収スペクトルに基づき、その元素の周囲における局所的な電子状態及び原子配列に関する情報を抽出できる手法です。例として、酸化亜鉛のK吸収端近傍におけるXAFSスペクトルを示します。入射X線エネルギーの増加に伴い、内殻電子の励起が可能となるエネルギーで吸収係数が急増する点は吸収端と呼ばれます。吸収端近傍からおよそ数十eV(概ね+30〜+50 eV)までの領域はX線吸収端近傍構造(X-ray Absorption Near Edge Structure, XANES)領域と呼ばれ、原子の酸化状態、結合様式などの化学状態に関する情報が反映されます。また、それより高エネルギー側の領域は広域X線吸収微細構造(Extended X-ray Absorption Fine Structure, EXAFS)領域と呼ばれ、原子間距離、配位数などの立体構造に関する情報が反映されます。

 

酸化亜鉛のXAFSスペクトル
酸化亜鉛のXAFSスペクトル
  • XAFS法の強み
    • (1)高い元素選択性
      試料中に複数の元素が存在していても対象元素の吸収端に合わせて測定することで、その元素の内殻電子のみを選択的に励起できる
    • (2)試料への非破壊性と高い透過能に基づく実試料評価
      X線の高い透過能により前処理が不要で、測定対象を非破壊的に製品に近い状態で評価できる

 

測定事例1:硫黄K吸収端XAFS法によるポリフェニレンサルファイド樹脂の硫黄原子の化学状態の評価

 ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylene sulfide, PPS)樹脂は、耐熱性、耐薬品性などの優れた特性を持つ結晶性樹脂の一種で、自動車用部品として広く使用される材料です。高分子材料は熱、紫外線、酸化反応などによって分子鎖が切断され、力学物性が低下する劣化現象が進行します。ここでは、熱及び光によって劣化させたPPS樹脂に対して硫黄K吸収端XAFS(S K-edge XAFS)法を適用し、劣化時の硫黄原子の化学状態を評価した例を示します。本測定では、蛍光収量法及び電子収量法を同時に測定してXAFSスペクトルを取得しました。今回の測定系において、蛍光収量法の分析深さは数十 μmであり主に試料のバルクに関する情報が得られ、電子収量法の分析深さは数十 nmであり主に試料の表面に関する情報が得られます。硫黄のK吸収端に対応するX線エネルギーでは、空気によるX線の減衰の影響が大きいため、試料をHe大気圧下に配置しました。XAFSスペクトルにおいて、2472-2474 eV付近の吸収はフェニル基-硫黄-フェニル基(Ph-S-Ph)の硫黄原子によるもの、2482 eV付近の吸収はSO42-の硫黄原子によるものと考えられます。分析深さの浅い電子収量法において、光劣化させたPPSについて2482 eV付近のSO42-由来の吸収が強く観測されており、樹脂表面で光による酸化反応が優先的に進行したことが分かりました。

熱・光によって劣化させたPPSの蛍光収量法・電子収量法の同時測定によるXAFSスペクトル
熱・光によって劣化させたPPSの蛍光収量法・電子収量法の同時測定によるXAFSスペクトル

 

測定事例2:亜鉛K吸収端XAFS法によるゴム中の亜鉛化合物の成分比の評価

 硫黄架橋ゴムに配合される酸化亜鉛(ZnO)は加硫促進剤、ステアリン酸等と反応することで亜鉛錯体を形成し、硫黄架橋反応の促進に重要な役割を果たすことが知られています。硫黄架橋系ではZnOと硫黄及び加硫促進剤との反応による反応中間体を生成し、硫化亜鉛(ZnS)を伴いながらゴム主鎖と硫黄架橋構造を形成していくと考えられています。硫黄架橋ゴムを対象として亜鉛のK吸収端近傍のエネルギーでXAFS法を適用することでゴム中の亜鉛化合物の化学状態を評価することができます。

 加硫時間を変えてプレス成形した硫黄架橋スチレン−ブタジエンゴム(SBR)の透過法による亜鉛K吸収端XAFSスペクトルを示します(配合組成 SBR: 100 phr, ZnO: 3 phr, ステアリン酸: 1 phr, 加硫剤: 4 phr)。化学状態に敏感である吸収端近傍の領域に着目すると、未加硫時はZnOに帰属される9669 eVに吸収極大を持ちます。加硫時間の経過とともに9669 eVの吸収は減少、ZnSに帰属される9663-9664 eVの吸収が増大し、架橋反応の進行に伴いZnOが変化していることが示されました。

加硫時間を変えた硫黄架橋ゴムのXAFSスペクトル
加硫時間を変えた硫黄架橋ゴムのXAFSスペクトル
  • 線形結合フィッティングによる硫黄架橋ゴム中の亜鉛化合物の成分比の評価

 ZnO,ZnS及びステアリン酸亜鉛(ZnSt2)の三種の標準試料のXAFSスペクトルならびにこれらの標準試料を用いたフィッティングによって得られた硫黄架橋ゴムの亜鉛化合物の成分比変化を示します。加硫時間の経過に従ってZnOが減少し、ZnSが生成しました。このように、硫黄架橋ゴム中の亜鉛化合物の化学状態を評価可能です。

ZnO, ZnSt2, ZnS標準試料のXAFSスペクトル
ZnO, ZnSt2, ZnS標準試料のXAFSスペクトル
加硫時間を変えた硫黄架橋ゴム中の亜鉛化合物の成分比変化
加硫時間を変えた硫黄架橋ゴム中の亜鉛化合物の成分比変化

 

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