ゴム中に配合されているカーボンブラック、シリカ等のフィラー(充てん剤)の凝集構造は、ゴムの物理的特性に大きな影響を与えるため、定量的な評価が重要です。例えば、自動車用タイヤ中の充てん材の分散状態はタイヤの転がり抵抗に影響を及ぼし、転がり抵抗の低減は自動車の燃費向上に関係します。ゴム中の充てん剤の構造を評価するため、放射光X線を利用した小角X線散乱(Small Angle X-ray Scattering, SAXS)及び超小角X線散乱(Ultra Small Angle X-ray Scattering, USAXS)を用いた充てん剤凝集体の階層構造評価が精力的に行われています。
図1 ゴム中の充てん材の階層構造 |
充てん剤を添加したゴムのUSAXS-SAXSプロファイルを示します。解析に式(1)で表される関数1)を用いて散乱プロファイルのフィッティングを行うと、充てん剤の凝集体の回転半径や表面フラクタル次元等の情報が得られます。
q: 散乱ベクトル / nm-1 C1,C2,C3: 定数 Rg: 凝集体の回転半径 / nm Dm: マスフラクタル次元(1 < Dm < 3) Ds: 表面フラクタル次元(2 < Ds < 3) |
図2 充てん剤を添加したゴムのUSAXS-SAXSプロファイルの解析例 |
溶液重合スチレンブタジエンゴム(sSBR)のポリマー鎖の末端変性の有無とカップリング剤(CA)の有無によるシリカの凝集状態を比較するため計4つの配合でゴム試料を作製し、USAXS-SAXSを測定しました。sSBRの末端変性の有無については末端変性sSBRで、CAの有無についてはCAを添加した系でいずれも凝集体の回転半径が小さくなり、シリカの凝集の抑制効果が示されました。末端変性及びCA添加の両方を適用した系で凝集体の回転半径は最も小さくなりました。
このように、ゴム中の充てん剤の凝集状態の違いを定量的に評価可能です。
図3 4種のシリカ配合sSBRのUSAXS-SAXSプロファイル |
表1 4種のシリカ配合sSBRの凝集体の回転半径 |
参考文献
1) G. J. Beaucage, J. Appl. Crystallogr. 28, 717 (1995).