化学構造解析
以下の分析機器をはじめとした複数の手法による総合的な解析を行い、ゴム製品、プラスチック製品、塗料、シーリング材、接着剤等に使用されているポリマー、有機系添加剤{加硫促進剤、加硫促進助剤、酸化防止剤(老化防止剤)、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、軟化剤等}の構造を特定します。また、構造を詳細に解析することで、各製品のポリマーが劣化しているかどうかの判定、劣化度の定量的評価を行います。
GC-TOF-MS、LC-TOF-MS、LC-FTMSでは、精密質量を測定することが可能であり、精密質量から組成式を特定し、未知の化合物の推定を行うことができます。
また、NMRはポリマーの一次構造(モノマー種、連鎖分布、共重合比、微量構造等)の分析法として極めて有用であり、加硫ゴム等の溶媒に不溶な高分子材料については、固体NMR法(DD/MAS法、CP/MAS法)、ゴムNMR法(FG/MAS法)、膨潤NMR法を適用することで構造解析が可能です。
FT-IRの応用事例
- FT-IR-ATR法による加硫ゴムの劣化分析
ゴム、樹脂等の高分子材料は使用中に劣化が進行します。例えば、空気中で熱、光に暴露されることにより表面近傍では主に酸化劣化が進行します(自動酸化反応)。FT-IR-ATR法は、図1に示すように、酸化劣化により生じるカルボニル基(>C=O)等の官能基を高感度に検出できるため、劣化の有無の判定、劣化度の定量化に使用することができます。また、イメージングIR法を適用することにより、どの程度の深さまで劣化が進行したのかを明らかにすることも可能です。
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- 図1 熱劣化処理前後のカーボンブラック配合加硫天然ゴム(NR)のIRスペクトル
NMRの応用事例
- FG/MASプローブを用いた加硫天然ゴムの架橋点の構造解析
加硫ゴムの架橋点はゴムの物性を発現するための重要な構造ですが、その構造はいまだ完全には解明されていません。磁場勾配(FG)/マジック各回転(MAS)プローブを用いて解析することにより、架橋点のような微量構造についても多くの情報を得ることが可能になります。図2及び図3は加硫NRの架橋点の構造解析を行った結果の一部です。1H-NMRスペクトルと13C-NMRスペクトルを二次元NMR法により関連付けて解析することにより、各シグナルを相補的に帰属することが可能です。未帰属のシグナルも残っていますが、下図の加硫NRについては、硫黄により架橋した構造が約30%、硫黄と結合したものの架橋しなかった構造が約70%であることがわかります。NMRにより得られた結果を配合設計にフィードバックすることで、より優れたゴム材料を開発することが可能になります。
詳しくは本機構職員が執筆した論文及び書籍を参照してください。
・Quantitative analysis of crosslinking junctions of vulcanized natural rubber through rubber-state NMR spectroscopy
Saito, T.; Yamano, M.; Nakayama, K.; Kawahara, S. Polym. Test., 2021, 96, 107130.
・ゴムNMR法による架橋点の構造解析
齊藤貴之:CSJカレントレビュー 2023, vol.46, 80-86.
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- 図2 加硫NRのゴム状態1H-NMRスペクトル(拡大)
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- 図3 加硫NRのゴム状態13C-NMRスペクトル(拡大)
- 溶液2次元NMR法による添加剤の構造特定→詳細
- 固体19F-NMR法によるフッ素ゴムの共重合比の決定→詳細
- 膨潤13C-NMR法による加硫クロロプレンゴムの構造解析→詳細
- 固体29Si-NMR法による架橋シリコーンゴムの構造解析→詳細
- 固体1H-NMR法による架橋ポリウレタン(PU)の構造解析→詳細
- NMR法による直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂及びアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂の共重合比の分析→詳細
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