温度時間換算則は、周波数依存性測定の結果の周波数域を拡張するために用います。
1台の装置で広い周波数範囲のデータを測定することは困難です。低せん断速度での測定が得意な回転レオメータARES G2で10-5 Hz以下の周波数で測定した場合、測定完了までに1週間以上を要します。また1,000 Hz 〜 100 kHz域の高周波の粘弾性を測定できる装置は確認できていません。
温度時間換算則は、温度に依存して材料の粘弾性挙動が定数倍で変わることを利用し、任意の温度へシフト換算する法則です。実測が困難である高周波及び低周波の予測値を算出することができます。単純な高分子液体及び無定形の高分子固体では、大部分で成立することが知られていますが、結晶性高分子、ブレンド系及び固体分散系では成立しないことがあります。
具体的には、図のように、複数の温度で周波数依存性測定を行います。得られたデータを基準となる温度へ横シフトすることで、合成曲線が得られます。得られた合成曲線をマスターカーブと呼びます。
温度に対する横シフト量をWLFアモルファスポリマーの緩和機構の温度依存性について法則を発見したM. L. Williams、R. F. Landel、J. D. Ferryそれぞれの名前の頭文字を取った経験則の名称です。WLF則が成立した材料は、粘弾性挙動にシフトファクターをかけることで任意の温度へ換算することが可能です。則又はアレニウス則で近似することで、測定した温度範囲内で任意の温度にマスターカーブをシフト換算することができます。