キセノンアーク灯は、有機材料の劣化に大きく起因する紫外線領域の波長分布が太陽光に近似しており、ISOやJISなどの工業規格にも規定されている光源です。また、太陽光に近い放射照度(60 W/m2(波長:300〜400 nm))から3倍の放射照度(180 W/m2(波長:300〜400 nm))に設定することで、高エネルギーでの条件設定が可能となります。
試験手順、@試料をパネルに固定し、試験装置内に取り付けます。A屋外、屋内用のフィルタBブラックパネル温度(BPT)(暗黒時は試験槽内温度)、C水の付加を設定します。D暴露処理後の外観観察、色差測定、強度測定、表面分析等の評価試験を行います。
◆装置内部◆![]() |
|
||||||||||||||||
◆試料取付け例◆![]() |
![]() |
その他、製品形状や大型の試験片も対応できます。ご相談ください。
◆フィルタの種類◆
|
複数台保有していますので各種規格に迅速な試験対応が可能です。
◆主な対応規格◆
|
ポリプロピレン(PP)のキセノンウェザーメータによる耐候性評価
|
|||||||||||||||||||||
※ブラックパネル温度 |
フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて、暴露面の化学構造解析を行った結果、図1に示す通り、酸化劣化によって1720 cm-1のカルボニル基由来のピークが検出されました。
カルボニル基由来のピークと劣化に関与しない1458 cm-1のC-H変角振動のピーク強度を用いて、カルボニルインデックスを算出し、劣化指標としました。
図2に示す通り、暴露時間の経過に伴って、酸化劣化が進行していることがわかります。特にE光促進+熱促進では他に比べて劣化が著しく、光と熱による相乗効果が生じています。
また、材料を評価するうえで硬さや引張強さ・伸びなどの物性評価は欠かせない項目です。ここでは、シャルピー衝撃試験を行い、衝撃強さの変化を評価しました。
図3に示す通り、FT-IRの結果同様、暴露時間の経過に伴って衝撃強さも低下していることがわかります。これは、酸化劣化により暴露面に脆化層を形成したため、応力集中が生じ、衝撃吸収効果が低下したと推察されます。
そのほか色測定や光沢度測定などの外観変化、マイクロスコープや走査電子顕微鏡(SEM)による表面形態変化など様々な分析機器・評価装置を用いて多角的に劣化評価を行うことが可能です。
この例のように耐候性試験は、放射照度・温度・水噴霧の有無によって劣化度合いや挙動が大きく異なるため、目的に合わせた暴露条件を設定することが重要です。目的や用途によって、こちらから条件をご提案できることもあります。お気軽にお問い合わせください。
参考文献)飯塚智則;大武義人;田中敬二,材料,2017,66,238
→「耐候性試験Top」へ戻る |