材料の表面粗さは外観、摺動性、摩擦係数、固着性、接着性に関わる重要なパラメータの一つであるため、ベアリング、摺動部品、ロール部品等の工業製品の性能評価、研磨面等の処理後表面の評価等に利用されます。表面粗さを評価する方法として、接触式(触針式)と非接触式がありますが、本機構では、接触式の原子間力顕微鏡(AFM)及び非接触式の共焦点レーザー顕微鏡を所有しているため、ご希望に応じた受託測定が可能です。本機構の共焦点レーザー顕微鏡は、白色干渉計としての機能も有しているため、広範囲を高精度で測定可能です。また、大型ステージを搭載しているため、比較的大型の試料(高さ300 mm×幅300 mm×奥行1 m程度)も非破壊で測定することができます。
写真1 白色干渉計搭載共焦点レーザー顕微鏡の外観
表面粗さや表面形態の比較評価に使用される代表的な表面性状パラメータを表1及び表2に示します。
記号 | 正式名称 | 計算式 | 定義 | 類似パラメータ※ |
---|---|---|---|---|
Ra | 粗さ曲線の算術平均粗さ | 粗さ曲線用の基準長さLrにおける縦座標値Z(x)の絶対値の平均 | Pa、Wa | |
Rq | 粗さ曲線の二乗平均平方根粗さ | 粗さ曲線用の基準長さLrにおける縦座標値Z(x)の二乗平均平方根 | Pq、Wq | |
Rz | 粗さ曲線の最大高さ粗さ | 粗さ曲線用の基準長さLrにおける輪郭曲線の山高さZpの最大値と谷深さZvの最大値との和 | Pz、Wz | |
Rsk | 粗さ曲線のスキューネス、わい(歪)度 | Rqの三乗により無次元化した粗さ曲線用の基準長さLrにおける輪郭曲線の高さZ(x)の三乗平均 | Psk、Wsk |
記号 | 正式名称 | 計算式 | 定義 |
---|---|---|---|
Sa | 輪郭曲面の算術平均高さ | 基準領域Aにおける縦座標値z(x,y)の絶対値平均 | |
Sq | 輪郭曲面の二乗平均平方根高さ | 基準領域Aにおける縦座標値z(x,y)の二乗平均平方根 | |
Sz | 輪郭曲面の最大高さ | 基準領域Aにおける輪郭曲面山頂の最大山高さSpと輪郭曲面谷底の最大谷深さSvとの和 | |
Ssk | 輪郭曲面のスキューネス、わい(歪)度 | Sqの三乗により無次元化した基準領域Aにおける縦座標値z(x,y)の三乗平均 |
JIS B0601やJIS B0681-2に記載されているその他のパラメータ(Rp、Rv、Rc、Rt、Rku、RSm、RΔq、Sp、Sv、Sku、Sal、Str、Sdq、Sdr、Vvv、Vvc、Vmc等)も測定可能ですので、ご依頼時にご希望の表面性状パラメータをご指定下さい。
金属表面の光沢度は表面形態に応じて変化します。代表的な例としてアルミ箔があります。アルミ箔は金属ロールでの圧延により製造されますが、最終工程で2枚重ねて圧延されるため、ロールと接触する面とアルミ箔と接触する面では表面形態が変わり、光沢が変化します。アルミ箔両面の表面粗さの測定結果を示します。
写真2 共焦点レーザー顕微鏡によるアルミ箔の表面粗さ測定結果
光沢面と非光沢面で表面形態が大きく異なる様子がわかります。また、三次元方式で測定される表面粗さ(面粗さ)のパラメータとして最も広く利用される輪郭曲面の算術平均高さ(Sa)を比較すると、非光沢面は光沢面と比較してSaが約3.6倍高いことから、非光沢面は表面が粗い状態であることがわかります。また、例えば、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)などのその他のパラメータも算出できますので、目的に応じた解析が可能です。
白色干渉計を搭載した共焦点レーザー顕微鏡を用いることで、通常の共焦点レーザー顕微鏡では測定できないナノメートルオーダーの表面の凹凸を広い範囲(約1 mm×1.4 mm)で評価できます。スマートフォンディスプレイ(使用品)の拡大観察写真及び表面形態の解析結果を示します。
写真3 白色干渉計搭載共焦点レーザー顕微鏡により撮影したスマートフォンディスプレイの拡大観察写真(左)及び表面形態の解析結果(右)
白色干渉測定により、スマートフォンディスプレイ表面に極微細な傷が存在することがわかります。このデータを解析すると、輪郭曲面の算術平均高さ(Sa)は0.84 nmでした。また、上記の計測範囲内では、画像右上から左下にかけて凸状に湾曲している様子が認められます。この凸面の高さは約20 nmであり、スマートフォンディスプレイにはサブナノメートルオーダーの傷だけではなく、ナノメートルオーダーのうねりがあることもわかります。
共焦点レーザー顕微鏡は、表面に刻印された模様などの凹凸のプロファイルを解析することもできます。白色干渉測定により試料の凹凸を評価した結果を以下に示します。
写真4 白色干渉計により評価した基板表面の凹凸のプロファイル画像
高さプロファイルを解析することにより、この試料には縦横ともに約400 μmの周期で、高低差約10 μmの凹凸が存在することがわかりました。また、凹部の体積や断面積を測定することも可能で、この凹部の体積は約35000 μm3であることがわかりました。同様の測定を行うことにより、表面付着物の体積等を求めることもできます。
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