熱分析とは「一定の温度プログラムに従って、物質を加熱冷却したときに生じる物理量の変化を測定し、物理量を時間又は温度の関数として記録する分析法」です。
示差走査熱量測定(DSC)、熱重量測定(TG)、熱機械分析(TMA)等の測定方法を活用することで種々の材料の熱的性質、劣化度等を評価できます。
熱分析によって測定可能な項目は以下のものが挙げられます。
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示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)により、ゴムやプラスチックのガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)等を測定できます(対応規格:JIS K 6240、JIS K 7121等)。本機構では、超高感度センサーを用いた微量試料の分析、温度変調DSC※による熱的変化の詳細な解析が可能です。
※温度変調DSC
ガラス転移時に起こるエンタルピー緩和及び融解時に並行して生じるアモルファスの結晶化等の重畳した熱的変化を分離して観測することができ、正確にDSCカーブ上の熱的変化を解釈することができます。
超高感度DSCによるシリコーンゴムのガラス転移温度測定結果を図1、高密度ポリエチレン(HDPE)の融点測定結果を図2にそれぞれ示します。シリコーンゴムはガラス転移現象が観測されにくい物質の一つですが、試料量が1 mg程度の微量でもガラス転移温度を測定可能です。また、HDPEでは試料量がさらに少ない0.01 mg程度でも融解ピークを観測可能です。
図1 シリコーンゴムのTg測定結果 | 図2 HDPEのTm測定結果 |
熱機械分析装置(TMA:Thermal Mechanical Analysis)を用いて、線膨張係数、軟化温度の測定ができます(対応規格:JIS K 7196、JIS K 7197、JIS R 1618等)。一般に、高分子材料の線膨張係数は金属等に比べて大きいため、温度変化が生じる環境下で高分子材料を使用する場合、線膨張係数の把握が重要です。
TMAは、物質の温度を調節されたプログラムに従って変化させながら、物質の寸法変化を測定する方法です。圧縮モード、引張モードを使い分けることにより、様々な材料の熱膨張・熱収縮、軟化点、ガラス転移、熱履歴等を測定することができます。
対象試料 | ゴム、プラスチック、セラミックス、金属 等 | ||
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測定モード | 圧縮 | 引張 | |
試料形状 | バルク | フィルム | ファイバー |
推奨 φ5 mm×1〜5 mm 最大厚さ20 mmまで可 |
厚さ1 mm以下 幅6 mm 長さ15 mm |
長さ20 mm | |
測定温度範囲 | -150〜600 ℃ | ||
プログラム速度 | 0.01〜100 ℃/min | ||
荷 重 | 0.001〜1.0 N |
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の線膨張係数測定
図3 PMMAのTMA測定結果
酸化開始温度(Initial Oxidation Temperature: IOT)測定及び酸化誘導時間(Oxidative Inductive Time: OIT)測定はいずれも高分子材料の劣化度の相対評価に使用できる分析法です。どちらも示差走査熱量計(DSC)により測定しますが、IOT測定は昇温法、OIT測定は等温法という違いがあり、劣化評価を目的とした場合、測定に必要な試料量が少なく、測定精度も良好なIOT測定はOIT測定よりも優れた手法です1-2)。
熱劣化処理前後のエチレンプロピレンゴム(EPDM)のIOT測定結果を図4、FT-IR法による酸化劣化度の測定結果を図5にそれぞれ示します。IOT測定はFT-IR法と比較して、EPDMの初期の劣化を検出しやすい手法といえます3)。
図4 DSCによるIOT測定結果 | 図5 FT-IRによる酸化劣化度の測定結果 |
本機構職員の研究成果の例
1) 仲山和海;渡邊智子;大武義人;古川睦久 日本ゴム協会誌 2008,81,447.示差走査熱量計による昇温法と等温法の測定値の精度検討と劣化検出
2) 仲山和海;渡邊智子;大武義人;古川睦久 日本ゴム協会誌 2008,81,467.酸化開始温度による加硫ゴム,プラスチックの劣化評価
3) EPDMの高感度な定量的劣化検出方法の検討 生永由香里、仲山和海ら 日本ゴム協会エラストマー討論会,2013;発表番号C-1
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