構造材料、電子材料等には、無機・金属材料が広く用いられています。これらの材料は様々な種類の金属元素で構成されており、元素の割合のわずかな差異によっても特性が異なります。
本機構では、無機・金属材料の定性分析及び表面分析、高分子・その他化学製品に含まれる無機充填剤、有害金属の含有量分析及び半導体用材料、医療機器等から溶出する可能性を有する微量元素の分析を実施しています。
サンプルのサイズ、形状及び分析目的に応じて適切な方法を提案します。まずはお問い合わせください。
項目 | 分析内容 |
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化学組成 | ・ 蛍光X線(XRF)によるスラグ中の元素半定量分析及び酸化物換算量の算出 ・ 電子線マイクロアナリシス(EPMA)によるステンレスの元素半定量分析 ・ 金属の分解液調製及び誘導結合プラズマ発光分光分析(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry; ICP-AES)法 による無機・金属材料の元素含有量の定量分析 ・ X線回折(XRD)、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)及びラマン分光法による高分子材料中の無機充填剤の定性分析 |
表面の化学状態 | ・ 走査電子顕微鏡(SEM)-エネルギー分散X線分析(EDX、EDS)又はEPMAによる表面の元素イメージング ・ X線光電子分光(XPS)法によるエッチング処理後金属表面の酸化状態分析 |
溶出金属 | ・ 誘導結合プラズマ質量分析(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer; ICP-MS)法によるプラスチック容器内面付着微量金属の分析 |
元素不純物 | ・ ICP-MS法による医薬品中の微量金属の分析 ・ ガラス材料中の微量金属の分析(高濃度フッ化水素酸を用いた分析) ・ 難分解性試料中の有害元素の分析 アルミナ、ジルコニア、セラミック等の難分解性かつ高マトリクス試料について、独自のノウハウによる完全溶液化及びICP-MS法によるAs、Cd、Hg等の有害元素の微量分析が実施可能 |
名称 | 規格名・試験内容 |
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JIS K 6224 | ゴム用配合剤−酸化マグネシウム−試験方法 |
JIS T 0304 | 金属系生体材料の溶出試験方法 |
JIS Z 7302-5 | 廃棄物固形化燃料−第5部:金属含有量試験方法 |
EN 16711-3 | Textiles. Determination of metal content. Determination of lead release by artificial saliva solution |
ISO 21392 | Cosmetics - Analytical methods - Measurement of traces of heavy metals in cosmetic finished products using ICP/MS technique |
上記規格試験の他、お客様のご要望に応じて様々な試験を行っています。
ICP-AES装置は、ppm〜ppbレベルの金属元素を測定可能な分析装置です。試料溶液はネブライザーによってエアロゾル化され、アルゴンプラズマ中に導入されます。高温のプラズマ中で元素は励起され、基底状態に戻る際に元素固有の波長の光を放出します。放出された光は分光器によって波長ごとに分離され、発光強度を測定することで元素の定性及び定量分析を行います。
ICP-MS装置は、ppb〜pptレベルの微量金属元素を、ICP-AES法よりもさらに高感度で分析可能です。ICP-AES法と同様に、試料溶液はネブライザーによってエアロゾル化され、アルゴンプラズマ中でイオン化されます。生成されたイオンは、質量分析計内で質量電荷比(m/z)に基づいて分離され、検出器で各質量のイオン数を測定することで元素の定量を行います。
ICP-MS装置には、セルガスとの衝突や反応を利用してスペクトル干渉を除去する機能が備わっています。本機構では、シングル四重極型ICP-MSとトリプル四重極型の装置を所有しています。トリプル四重極型は、シングル四重極型では除去困難であったスペクトル干渉の低減が可能となり、より高感度な分析を行うことができます。
トリプル四重極型ICP-MSは、反応セル(CRC)を2つの質量分離フィルター(Q1、Q2セル)で挟む構成となっています。反応を起こすCRCの前にQ1セルを配置させることで、様々なスペクトル干渉を除去できます。
下図にリン(P)の測定模式図を示します。リンは水や大気が干渉要因となり、シングル四重極型ICP-MSでは測定困難ですが、トリプル四重極型ICP-MSの酸素(O2)マスシフトモードを用いると、Q1セルを通過した31P+が31P16O+(m/z 47)にマスシフトすることで、選択性が高まり高感度な分析が可能となります。
トリプル四重極型ICP-MSを使用することで可能になる測定例を下表に示します。
測定元素 | m/z | 干渉イオン | 反応ガス |
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P | 31 | NO、COH | O2 |
S | 32 | O2 | O2 |
Si | 28 | N2、CO | O2 |
As | 75 | CoO | O2 |
Se | 78 | Nd、Sm、NiO | O2 |
Ti | 48 | SO | NH3 |
Cr | 52 | SiOH、SO、SOH | O2 |
V | 51 | ClO | NH3 |
リン(P)及び硫黄(S)について、シングル四重極型ICP-MSのKEDモード(SQ-KED)とトリプル四重極型ICP-MSのO2マスシフトモード(TQ-O2)を用いて検量線を作成しました。比較結果を下図に示します。これらの元素は、SQ-KEDによる測定ではバックグラウンド干渉により低濃度の測定が困難でしたが、TQ-O2による測定では直線性の改善、バックグラウンド等価濃度(BEC)及び検出下限(LOD)の低下が達成され、従来の測定法と比較してより低い濃度の定量分析が可能です。
測定モード | R2 | BEC (μg/L) |
LOD (µg/L) |
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SQ-KED (31P) | 0.9789 | 8.454 | 0.257 |
TQ-O2 (31P16O) | 0.9988 | 3.656 | 0.0697 |
測定モード | R2 | BEC (μg/L) |
LOD (µg/L) |
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SQ-KED (32S) | 0.5797 | 312.122 | 5.6746 |
TQ-O2 (32S16O) | 0.9994 | 6.084 | 0.1702 |
酸・アルカリ | 濃度 |
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硝酸 | <10% |
塩酸 | <10% |
フッ化水素酸 | <10% |
硫酸 | <5% |
リン酸 | <1% |
王水 | <5% |
水酸化テトラメチルアンモニウム | <10% |
アンモニア | <10% |