シリコーンゴム、シリコーンオイル等のシリコーン系ポリマーは、主鎖部がケイ素(Si)及び酸素(O)の直接結合からなるシロキサン結合(Si-O)の構造であり、炭化水素系ポリマーの主鎖である炭素(C)結合C-Cと比較して結合エネルギーが高いため結合が壊れにくく、シリコーンが耐熱性に優れる要因となっています。また、シリコーン特有の低温特性や低表面張力により、シリコーン材料のみが得意とする使用分野が存在するため、代替の利かないポリマーとしても用いられています。
本機構ではシリコーン系ポリマーの分析に関する長年の知見と最新の分析技術を活かし、下記の分析を実施しています。
項 目 | 分析内容 |
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主鎖の構造解析 | シリコーンポリマーは、ジメチルシロキサン単位を主鎖骨格とするポリジメチルシロキサンの他に、側鎖や末端にビニル基、フェニル基、フルオロアルキル基等の置換基を導入したポリマーが存在します。 核磁気共鳴(NMR)法による解析及び化学分解処理を用いたモノマー定性分析により詳細な構造解析を行います。 <測定事例紹介> ・固体 29Si-NMR法による架橋シリコーンゴムの構造解析 |
置換基の定量分析 | ビニル基又はフェニル基等の置換基の導入されたシリコーンポリマーは、置換基の含有量により加工性、物理特性、化学特性等が変化します。 シリコーンオイルだけでなく、架橋ゴムについても化学分解等の前処理を用いて、置換基の定量分析を実施します。 <測定事例紹介> ・化学分解−GC/MS法による架橋シリコーンゴムの残存ビニル基の定量分析 |
未架橋シリコーンの 分子量、分子量分布測定 |
シリコーンポリマーは分子量の増加に伴って粘度が増加します。粘度によってオイル及びゴムの物理特性が変化します。 ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量及び分子量分布を測定します。 |
金属触媒の定量 | 付加硬化型シリコーンゴムは硬化触媒として白金、ロジウム、錫系化合物等が用いられます。 誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)法又は誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)法により、シリコーンゴムにppmオーダーで含まれる金属触媒由来の元素を定量します。 |
項 目 | 分析内容 |
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組成分析 | シリコーンゴムは有機成分(ポリマー、可塑剤等)と無機成分(補強剤、無機系添加剤等)で構成される複合材料です。 有機・無機成分について定性分析により各配合剤を特定後、それらの比率を求めます。 |
シリカの分析 | 多くの場合、シリコーンゴムには補強剤としてシリカが含まれています。シリカは製法によって表面シラノール基の異なる湿式、乾式に分けられ、それらの差異によって補強性が変化します。 固体29Si NMR法及び不純物元素の分析により、シリカの種類、ポリマー/シリカ界面の構造に関する評価を実施します。 |
環状シロキサン、直鎖状シロキサンの定量分析 | シリコーンゴム中に含まれる低分子量シロキサンは電子部品の接点障害の原因となるため、その量を把握することが重要となります。 シリコーンゴム製品中に含まれる低分子量シロキサン含有量、製品の使用温度における発生量を測定します。 <測定事例紹介> ・環状シロキサンの定量 |
食品衛生法に基づく試験 | 昭和34年厚生省告示第370号「食品、添加物等の規格基準」に従って試験を実施します(一部改正:平成24年厚生労働省告示第595号)。 ・食品衛生試験 |
シリコーンゴムのポリマー主鎖の化学構造の特定、シリカ(SiO2)の表面構造の解析を実施します。また、シリコーンゴム製品の使用環境で生じた劣化等に基づく構造変化の解析も実施可能です。
架橋シリコーンゴムの測定結果の一例を事例@、Aに示します。
市販品の架橋シリコーンゴムの固体29Si DD/MAS NMRスペクトルからは、ポリマーに由来するポリジメチルシロキサン(PDMS)及び無機化合物であるシリカに由来するピークが検出されました。また、劣化に基づき生成した架橋構造に由来するピークが-56、-67 ppm付近に認められました。
29Si CP/MAS NMR法では運動性の低い29Siの周辺に関する構造について情報が得られます。市販品の架橋シリコーンゴムの固体29Si CP/MAS NMRスペクトルからは、シリカの表面シラノール基の異なる結合状態であるSiO2(OH)2:Q2、SiO3(OH):Q3及びSiO4:Q4に由来するピークが検出されました。
上記の化学構造の他に、シリカと結合した分子(例:ウェッター、PDMSとの水素結合、シランカップリングによるシリカ表面の化学的修飾等)の化学構造のピークも本法により検出することが可能です。
架橋シリコーンゴムに残存するビニル基等の官能基の定量分析を実施します。化学分解−GC/MS法を用いることで、NMR法では検出感度不足によって困難であった架橋シリコーンゴム試料中に微量に存在する化学構造の定量が可能です。
架橋密度が異なるシリコーンゴムの残存ビニル基量を化学分解−GC/MS法により定量分析した例を事例Bに示します。
架橋剤量を変化させて配合したシリコーンゴムについて、化学分解−GC/MS法により残存ビニル基量を定量した結果、架橋密度の上昇と残存ビニル基の減少に相関関係が認められました。残存するビニル基を数10 µg/gのオーダーで定量することで、ビニル架橋型のシリコ−ンゴム製品について、架橋反応の進行度を捕捉することが可能です。