遊離硫黄、全硫黄
概要
加硫剤又は加硫促進剤が配合された加硫ゴムには、加硫反応後の硫黄化合物残さ及び未反応の硫黄(遊離硫黄)が含まれることがあります。加硫ゴムを他の材料と接触させて使用すると、硫黄化合物、遊離硫黄による接触汚染を引き起こすことがあります。また、非接触でも、使用環境次第ではゴム製品から硫黄化合物、硫黄が揮発し、周囲で設置される電気回路に埋め込まれた金属導線の腐食等、トラブルの原因となることが知られています。そのため、電気・電子部品周囲で用いられるゴム製品については、硫黄化合物、遊離硫黄を管理することが求められています。
ゴムの組成分析の一環として、ゴム製品中の配合硫黄量を求めるための全硫黄の定量も可能です。
本機構では遊離硫黄、全硫黄について以下の分析を実施しています。

ゴム材料の全硫黄、遊離硫黄
ゴム製品中の遊離硫黄、全硫黄の分析
項 目 |
分析内容 |
遊離硫黄 |
試験方法: | 亜硫酸ナトリウム法 |
原 理: | 試料中の遊離硫黄を水溶性の亜硫酸ナトリウムと反応させ、生成したチオ硫酸ナトリウムをよう素滴定法で定量する。加硫ゴムに残留している加硫促進剤が結果に影響する場合がある。 |
参考規格: | JIS K 6234(廃止規格) 「ゴム−遊離硫黄の定量 7.亜硫酸ナトリウム法」 |
※亜硫酸ナトリウム法では、S8以外のポリスルフィド結合の一部、硫黄供与体由来の硫黄も遊離硫黄に加算される。
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試験方法: | 溶剤抽出−誘導体化−高速液体クロマトグラフィー(HPLC) |
原 理: | 試料の溶剤抽出液中の無機遊離硫黄(Sx)をトリフェニルホスフィンにより誘導体化してトリフェニルホスフィンスルフィド(TPPS)とする。TPPSを定量することで遊離硫黄量を求める。 |
対応規格: | ISO 20163 「Vulcanized rubber - Determination of free sulfur by gas chromatography (GC) and high performance liquid chromatography (HPLC)」 |
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遊離硫黄(S8) |
試験方法: | 溶剤抽出−HPLC |
原 理: | 試料の溶剤抽出液中の遊離硫黄(S8のみ)をHPLCにより定量する。 |
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全硫黄 |
試験方法: | 燃焼分解−イオンクロマトグラフィー(IC) |
原 理: | 試料を管状炉燃焼法により燃焼させ、ICにより全硫黄量を求める。 |
対応規格: | JIS K 6233 「ゴム―イオンクロマトグラフィーによる全硫黄の求め方(定量)」 |
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揮発性硫黄化合物の分析
項 目 |
分析内容 |
加熱発生遊離硫黄(S8) |
試験方法: | 加熱発生捕集−高速液体クロマトグラフィー(HPLC) |
原 理: | 試料を一定時間加熱して、発生した遊離硫黄(S8)を捕集し、HPLCにより発生硫黄量を求める。 |
温度範囲: | 50℃〜120℃ |
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