プロテオミクス

SDS-PAGEや二次元電気泳動等を用いて試料中のタンパク質を分離し、高分解能質量分析計(Q-Exactive Plus)を用いて高精度に同定します。タンパク質の定量や2D-DIGEやiTRAQ等の比較定量にも対応します。


特徴

当機構は、SDS-PAGE、二次元電気泳動等を用いた各種タンパク質の測定から、高精度なプロテオーム解析まで実施しています。

プロテオーム解析 基本メニュー

  1. タンパク質の抽出(ホモジナイズ、超音波処理)
    対応可能な試料(動物組織、酵母、大腸菌、培養細胞、植物組織など)。タンパク質の局在解析のためのオルガネラ(核、ミトコンドリア等)等の分画も可能です。
  2. タンパク質定量(Bradford 法、Lowry 法)
    試料中に含まれる塩類により測定が困難な試料に関しては、脱塩処理後にタンパク質定量を実施します。
  3. SDS-PAGE、二次元電気泳動によるタンパク質の分離
    SDS-PAGE: ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動
  4. 2D-DIGE タンパク質の分離
    2D-DIGE: 2-D Fluorescence Difference Gel Electrophoresis
    (蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動解析)
  5. LC-MS/MSによるタンパク質の同定
    LC-MS/MS: 液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法
  6. LC-MS/MS による一斉同定とノンラベル定量解析
  7. 抗体アレイ解析
  8. RI標識化合物を使用した各種測定、解析

プロテオーム解析の特徴

当機構では、国内で最も早い時期からプロテオーム解析に取り組み、すでに10年以上の解析経験を積んでいます。これまでに培ったプロテオーム解析のノウハウに加えて、当機構でプロテオーム解析用に特別に開発した500 mmの超ロングnanoLCカラムとQ-Exactive Plus(Thermo Fisher Scientific社)の組み合わせで世界最高レベルのショットガン解析を提供しています。また、プロテオーム解析のもう一つの柱である2D-DIGE(Two-Dimensional Fluorescence Difference Gel Electrophoresis)法*を用いたタンパク質発現解析は、抗体医薬やワクチンの品質管理への応用が注目されるようになってきています。

ショットガン解析と2D-DIGEの組み合わせによる発現量が非常に少ないタンパク質(血中のマーカー探索)の解析は強力な研究ツールとなりつつあります。当機構のプロテオーム解析ノウハウ、nanoLCカラム、Q-Exactive Plusと2D-DIGEにより、新しいプロテオーム解析が可能になります。

Q-Exactive Plus
Q-Exactive Plus

Orbitrapは、高周波や強磁場を必要としないイオントラップ型質量計で、高い分解能(最大分解能140,000)と安定した質量精度を特徴としています。Q-Exactive Plusは、このOrbitrapと四重極型質量計のハイブリッド型ベンチトップFTMSです。四重極とOrbitrapの組み合わせで定量解析と構造確認を同時に行うことを目的に設計されています。

L-column2 ODS
L-column2 ODS

L-column シリーズは、独自のエンドキャッピング技術により、シラノール基や金属不純物の二次的相互作用を抑え、カラム本来の分離機構を追及したカラムで、プロテオーム解析で解析する複雑なペプチド混合物の分離に優れた性能を示します。

* 当機構は、2D-DIGE (GE Healthcare社)の正式なサービスプロバイダです。
http://www.gelifesciences.co.jp/technologies/ettan_dige/index.asp
(2D-DIGE is performed under license from Carnegie Mellon University under U.S. Patent Numbers 5,268,486; 6,048,983; 6,127,134; 6,043,025; 6,426,190 and related patents.)

LC-MS/MSによるタンパク質の同定、ショットガン解析、定量解析

当機構は、2014年5月に新規質量分析装置としてQ-Exactive Plus(Thermo Fisher Scientific Inc.)を導入し、SDS-PAGEや二次元電気泳動で分離したサンプル中におけるアトモルレベルのタンパク質の同定が可能になりました。また、血液、各種生体組織サンプル中のタンパク質混合物をショットガン解析する場合には、数マイクロgのタンパク質から数千タンパク質規模での同定、iTRAQ、SILAC等の安定同位体ラベルを使用した定量比較解析が可能です。

さらに、リン酸化、アセチル化等の翻訳後修飾タンパク質、アフィニティ精製や免疫沈降で精製したタンパク質混合物等の一斉同定や定量比較解析にも対応しています。

二次元電気泳動(2D-DIGE)によるディファレンシャル解析

タンパク質の発現量の定量比較解析(ディファレンシャル解析)は、プロテオーム解析の基本となる技術です。これまで二次元電気泳動を用いた解析では、その再現性の悪さや多くの煩雑な操作が必要であるといった問題点が指摘されてきました。しかし、当機構で採用しているタンパク質ディファレンシャル解析手法である2D-DIGEは、これらの問題点を解決した正確な定量比較が可能であるばかりでなく大量のサンプルを処理可能なハイスループットなプロテオーム解析の手法です。

通常、試験はn=3で実施し統計処理により有意な変動のあるスポットを検出しますが、より安価に比較解析を実施したいというご要望にお応えして、2サンプルをn=1で比較する簡易試験(統計解析は実施しませんが、サンプル間の検出された全スポットの容積比をご報告いたします。)を開始しました。

応用

定量プロテオーム解析

CERIの定量プロテオ-ム解析は、目的に応じて網羅的な定量比較解析(iTRAQ、SILAC等の安定同位体ラベルまたはノンラベル定量)、ターゲットタンパク質の相対定量(MRM解析)またはターゲットタンパク質の絶対定量(AQUAペプチド等の安定同位体ラベルペプチドを使用したMRM解析)の中から適切な方法を選択することが可能です。

特にLFQ解析においては、5年間に渡って蓄積したDDA法(データ依存性解析)で取得した500万を超えるスペクトルおよびクロマトグラムのデータベースを用いて、DIA法で参照するための内部データベースを構築しております。このDIA用内部データベースを参照することで、信頼性の高いDIA(データ非依存性解析)法による定量比較解析を実施することが可能です。

Exosome(エクソソーム)の解析

各種培養細胞の上清中、実験動物やヒトの尿、血清、唾液、涙液をはじめ植物等にも存在するExosome(エクソソーム)のnanoUPLC-ESI-MS/MSを用いたショットガン解析や2D-DIGE: 2-D Fluorescence Difference Gel Electrophoresis (蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動解析)を用いた比較解析を実施いたします。エクソソームの抽出、精製から受託することも可能です。

オプションとして、エクソソーム量および精製度の確認をMalvern Panalytical社製NanoSight NS300を使用したトラッキング解析*で粒度分布、粒子径、粒子数濃度を求めることにより実施いたします。また、CD9等のエクソソームマーカーを用いたELISAでの確認も可能です。

*NanoSight NS300を用いたトラッキング解析は、日本カンタム・デザイン株式会社で実施いたします。

FFPE組織サンプルの解析

ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE: Formalin-Fixed Paraffin-Embedded)組織からタンパク質を抽出して、2D-DIGE: 2-D Fluorescence Difference Gel Electrophoresis (蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動解析)、SDS-PAGEまたは、nanoUPLC-ESI-MS/MSによるショットガン解析で比較解析を行います。

オプションとしてLMD*(レーザーマイクロダイセクション:Leica Microsystems社製 LMD7000を使用)で取得した微小部位間の比較解析を実施可能です。LMDで取得した数μm2の細胞内小器官(オルガネラ)等の微小部位から数百タンパク質の発現比較が可能です。

*LMD7000を使用したサンプルの採取は、株式会社テクノプロ テクノプロ・R&D社で実施いたします。

バイオマーカー探索

ヒト臨床サンプルや疾患モデル動物を用いて、血液、尿、髄液などにおけるタンパク質を解析することにより、病態と連動して変動するタンパク質を同定し、疾患バイオマーカーの発見につなげる疾患プロテオミクス研究が注目されています。疾患プロテオミクスの対象とする測定サンプルとしては、採取の容易さなどから特に血液サンプルでの研究が最も盛んに行なわれています。血液中のタンパク質は、22種類の主要タンパク質で99%が構成されており疾患マーカーとして重要なタンパク質の多くは残り1%のなかに含まれているため、疾患マーカーの探索が困難となっています。

当機構では、抗体カラム、分子量分画、ProteoMinerビーズ処理等の方法を用いた主要タンパク質を除去して微量の疾患マーカーを効果的に探索する独自の技術を開発しています。本手法は、尿試料および培養上清中の血清の処理にも適用可能です。

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血液・尿中のバイオマーカー探索

学会発表 2010年 日本ヒトプロテオーム機構第8回大会

バイオ医薬品中の不純物解析

当機構では、タンパク質医薬品の製造工程に由来するタンパク質性不純物や目的タンパク質の分子変化体の高感度検出、高精度な定量比較に最適な2D-DIGEを利用した「タンパク質医薬品中の不純物解析」を実施しています。

製造工程の各段階における不純物の解析、製造工程の変更に伴う不純物のロット間差の管理に有用な方法です。

不純物解析方法

バイオ医薬品の糖鎖分析

IgGやエリスロポエチンなどといった糖タンパク質性のバイオ医薬品の承認申請には、タンパク質と結合している糖鎖のプロファイリングや糖組成の分析が必要になります。当機構では糖組成分析や多次元HPLC分析によるバイオ医薬品の糖鎖プロファイリングを受託試験として実施しています。

フォーカスドプロテオミクス

さまざまな前処理と2D-DIGEおよびLC-MS/MSを組み合わせて、以下のタンパク質にプロテオーム解析を受託しています。

目的タンパク質前処理法
目的タンパク質 前処理法
・ リン酸化タンパク質(ペプチド)
・ 糖タンパク質(ペプチド)
・ ユビキチン化タンパク質
・ 酸化タンパク質
・ ミトコンドリア、核等のオルガネラ
・ P450等の膜タンパク質
IMAC(イオンメタルアフィニティークロマトグラフィー)
レクチンアフィニティークロマトグラフィー
抗ユビキチン化抗体カラム
カルボニルタンパク質濃縮カラム
ショ糖濃度勾配による遠心分離
溶解性による分画
  • 学会発表 2009年日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
    Chip-Based Infusion法によるユビキチン化タンパク質の多型解析
  • 論文発表
    Yamanaka, H., Takeyoshi, M., Minobe, Y., Yakabe, Y., Takatsuki, M., Sato, H., Drug Metabolism Letters, 1, 281-286 (2007)
    Yamanaka, H., Yakabe, Y., Saito, K., Sekijima, M.,Shirai, T., Quantitative proteomic analysis of rat liver for carcinogenicity prediction in a 28-day repeated dose study. Proteomics 7, 781-795 (2007).
    Yamanaka, H., Minobe, Y., Yakabe, Y., Saito, K., Sekijima, M., Shirai, T., High-accuracy Prediction of Carcinogenicity by Global Quantitative Analysis of Post-translational Modifications in a 28-Day In Vivo Rat Study. Cancer Genomics & Proteomics 5, 105-116 (2008)

膜タンパク質の解析

P450等の膜タンパク質を二次元電気泳動で解析することは、種々の界面活性剤が開発された現在でも困難な課題の一つです。当機構では、上記のフォーカスプロテオミクスでは膜タンパク質のみを溶解性により分画後にショットガン解析を実施する選択的ショットガン法または2D-DIGEによる同定法を開発しています。この手法を用いて、33種のP450タンパク質を同定し、定量分析が可能となっています。

二次元電気泳動での測定が難しく、バイオマーカーが発見できなかった場合等、ぜひお試しください。

図 CYPアイソフォームの検出例 黒:分画後のMS解析検索結果、灰色:分画前のMS解析検索結果* 分画前に検出されず、分画後に検出されたアイソフォーム
図 CYPアイソフォームの検出例 
黒:分画後のMS解析検索結果、灰色:分画前のMS解析検索結果
* 分画前に検出されず、分画後に検出されたアイソフォーム

P-450の多型解析

CYPアイソフォームの解析は、新薬の臨床試験における薬物相互作用の検討、個々の患者に対するオーダーメード医療における診断等の目的に必須であり、CYPアイソフォームの質量分析装置を用いたプロテオーム解析研究が注目されています。CYPアイソフォームの網羅的解析では、CYPスーパーファミリーの1次構造が非常に近似していることが解析を困難にする要因の1つとして考えられますが、当機構ではこれまでの研究から、構造近似性に由来する物理化学的な性状の近似性を解析に利用し、ヒトおよびラット肝ミクロソームを溶解性に基づいて分画した後に、各画分に含まれるタンパク質をMS/MSにより一斉同定することによって膜タンパク質であるCYPを難溶解性画分に濃縮、発現しているCYPアイソフォームの網羅的かつ定量的な解析を受託試験として実施しています。

CYPアイソフォームの同定に加えて、質量分析データのデータベース検索アルゴリズムを改良してアミノ酸配列のシークエンシングによって、タンパク質レベルで一塩基多型解析(SNPs: Single Nucleotide Polymorphisms)に対応する一アミノ酸置換(SAPs:single amino acid polymorphisms)の質量分析データから直接的に解析可能としています。

タンパク質複合体の解析 

タンパク質の機能解析には、相互作用するパートナーを同定することが欠かせません。免疫沈降法やさまざまなタンデムアフィニティ精製(TAP)法により精製したタンパク質複合体混合物にショットガン法を用いることによってタンパク質複合体を形成しているパートナータンパク質を網羅的に同定します。また、得られたタンパク質複合体中の特定のタンパク質の翻訳後修飾を二次元電気泳動によって解析することも可能です。

糖鎖分析

近年では従来のプロテオーム解析だけでなく、糖鎖をはじめとした翻訳後修飾の解析が注目されています。なかでも多くのタンパク質には糖鎖が付与されており、糖鎖はタンパク質の体内動態の決定や安定性の向上・生理活性の調節など重要な役割を果たしていることから、特に注目を集めています。特に、エリスロポエチンなどといった糖タンパク質性のバイオ医薬品の承認申請には、タンパク質と結合している糖鎖のプロファイリングや糖組成の分析が必要になります。

当機構では、タンパク質の翻訳後修飾の解析の一つとして、糖組成分析や多次元HPLC分析による糖鎖の分析を受託試験として実施しています。

  • 糖組成分析
  • 多次元HPLC分析

二次元電気泳動データベース

当機構では、種々の動物種の肝臓、血液についての二次元電気泳動データベースを作成することによって、どのスポットがどのタンパク質に該当するのかが分かっていれば二次元電気泳動(2D-DIGE)をマイクロアレイのように使用可能であることから、種々の動物種の肝臓、血液をはじめとするさまざまなサンプルの二次元電気泳動データベースを構築し、活用しています。当機構では、5000スポット以上の二次元電気泳動法で分離されたタンパク質を同定しています(データの一部は、NEDOトキシコゲノミクスプロジェクトの中で取得したものです)。

以下のPDFに、当機構の二次元電気泳動データベースに登録しているタンパク質の一部についてタンパク質名の一覧表を示しました。

タンパク質アダクトの解析

特異体質性薬物毒性(IDT:Idiosyncratic drug toxicity)と総称される副作用発現の最初のステップとして生体内で生成した薬物の反応性代謝物とタンパク質との共有結合体(アダクト)の存在が明らかにされています。当機構では、RI標識化合物の反応性代謝物とタンパク質が形成するアダクトを二次元電気泳動法により分離してRIイメージを取得し、アダクトを形成したタンパク質を高精度に同定する独自の手法を開発しています。 

学会発表 2009年 日本薬物動態学会 第24回年会

担当部門:環境技術部門

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