業務概要
発がん性予測システム(CARCINOscreen®)について
発がん性スクリーニングの一環として、本システム(CARCINOscreen®)を開発しました。
本システムは化合物を投与したラット肝臓における遺伝子の発現量を測定し、発がん性予測用にカスタマイズされた遺伝子群を用いて、早期に化合物の発がんリスクを予測するものです。通常のげっ歯類を用いた発がん性試験は投与期間として2年間が必要ですが、本システムでは14日間もしくは28日間の短期間投与で得られる生体試料を適用できることが大きな特徴です。
発がん性予測システム(CARCINOscreen®)のメリット
化合物が生体内に入ると、ADME(吸収・分布・代謝・排泄)を経て毒性を示す場合があります。本システムは化合物の発がん性を早期にスクリーニングできる手法の一つとして、生体試料を用いることで生体反応を反映したデータを得ることができ、より精度の高い予測結果を得ることができます。
また、化審法で実施される28日間反復投与試験や長期毒性試験の用量設定試験(14日間反復投与試験)等から得られる生体試料を本システムに適用することができますので、大幅なコスト短縮が可能となります。
受託解析の詳細に関してはこちらをご覧ください。
当機構の活動
本システムは、当機構がNEDOプロジェクト(3社共同研究)の成果を活用して、独自に開発した短期発がん性予測システムです。得られた成果は学会/論文発表を積極的に行っています。
論文発表
- Matsumoto H, Yakabe Y, Saito K, Sumida K, Sekijima M, Nakayama K, Miyaura H, Saito F, Otsuka M, Shirai T. Discrimination of carcinogens by hepatic transcript profiling in rats following 28-day administration. Cancer Inform. 2009, 13;7:253-69.
- Sumida K, Saito K, Oeda K, Otsuka M, Tsujimura K, Miyaura H, Sekijima M,Nakayama K, Kawano Y, Kawakami Y, Asamoto M, Shirai T. Optimization of an animal test protocol for toxicogenomics studies (ii); a cross-laboratory gene expression analysis. J Toxicol Sci. 2007,32(1):33-45.
- Sumida K, Saito K, Oeda K, Yakabe Y, Otsuka M, Matsumoto H, Sekijima M,Nakayama K, Kawano Y, Shirai T. A comparative study of gene expression profiles in rat liver after administration of alpha-hexachlorocyclohexane and lindane. J Toxicol Sci. 2007, 32(3):261-88.
- Nakayama K, Kawano Y, Kawakami Y, Moriwaki N, Sekijima M, Otsuka M, Yakabe Y, Miyaura H, Saito K, Sumida K, Shirai T. Differences in gene expression profiles in the liver between carcinogenic and non-carcinogenic isomers of compounds given to rats in a 28-day repeat-dose toxicity study. Toxicol Appl Pharmacol. 2006, 217(3):299-307.
学会発表:国内
- 日本環境変異原学会:新人奨励賞(2003年)、(2004年)、(2005年)
- トキシコゲノミクス国際フォーラム(2004年)
- 毒性病理学会;学会発表賞(2005年)、(2006年)
- 日本トキシコロジー学会;優秀研究発表賞(2009年)、(2010年)
- 日本癌学会(2008年)、(2009年)
学会発表:海外
- Society of Toxicology (SOT) [米国毒性学会] (2005年)、(2011年)
- ICEM2005 Satellite Meeting: Toxicogenomics(2005年)
受託解析内容
概要
短期発がん性予測システム;CARCINOscreenRは、長期間の投与と膨大な費用のかかる化合物の発がん性試験に関して、短期間(最大で28日間)投与されたラットの肝臓における遺伝子の発現変動をマイクロアレイで測定し、発がん性予測用にカスタマイズされた遺伝子群の発現量に基づき早期に化合物の発がんリスクを予測するものです(図1)。

適用範囲
| 動物系統 | Crlj:CD (SD)ラットもしくはF344ラット、雄 |
|---|---|
| 標的臓器 | 肝臓 |
| 群構成 | 3匹以上/1群 |
| 用量 | 溶媒対照群+2用量以上 |
| 投与経路 | 強制経口投与 |
| 投与期間 | 14日間もしくは28日間 |
| マイクロアレイ | ・Whole Rat Genome Toxplus (Agilent、カスタムアレイ) ・Rat Genome 230 2.0 Array (GeneChip®; Affymetrix) |
システムの特徴
短期発がん性予測システム;CARCINOscreenRの特徴は以下のとおりです。
- 低コスト・短期間・高精度に発がん性をスクリーニング
90%以上の精度で発がん性予測が可能。予測結果をスコア値として定量的に表示できます(図2)。 - 変異発がん物質、非変異発がん物質の両方に適用
変異*発がん物質だけでなく、非変異*発がん物質についても高精度に予測可能です(図2)。 - 多様な予測システムの受託メニュー
さまざまな実験条件に対応できるように、用いる動物系統、投与期間、マイクロアレイの種類から、3つのタイプの発がん性予測・受託メニューをご用意しています(表1)。
*ここで用いている「変異」もしくは「非変異」とはAmes試験の結果で「陽性」もしくは「陰性」を示したものを指します。

| # | 動物系統 | 投与期間 | マイクロアレイ | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| (1) | F344ラット | 28日 | Toxplusアレイ*2 (Agilent社) | 網羅的遺伝子発現解析も同時に可能 |
| (2) | SSDラット*1 | 28日 | 一般毒性試験での汎用系統に適用 | |
| (3) | F344ラット SDラット*1 | 14日 | GeneChip® (Affymetrix社) | より短期の動物試験、トップシェアのアレイに対応 |
*1:Crlj:CD (SD)ラット
*2:Whole Rat Genome Toxplus (Agilent、カスタムアレイ)
受託メニュー(説明)
各受託メニューの概要について以下に説明します。
(1) F344ラットの28日間投与試験におけるToxplusアレイデータを用いた予測
本発がん性予測メニューは、F344ラットを用いた動物試験に適用できます。遺伝子発現量測定にはWhole Rat Genome Array Toxplus(以下Toxplusアレイ)を用います。このToxplusアレイは発がん性予測のためにカスタマイズされた予測遺伝子群に加え、Agilent社の市販ラット全遺伝子(Whole Rat Genome Arrayに搭載の約40,000遺伝子)を搭載したもので、発がん性スクリーニングのみならず、その他の毒性や薬効に関する網羅的遺伝子発現解析が同時に実施できます。
(2) SDラットの28日間投与試験におけるToxplusアレイデータを用いた予測
本発がん性予測メニューは、毒性試験の汎用系統であるSDラットへ適用範囲を拡大した予測システムです。遺伝子発現量測定にはToxplusアレイを用います。適用性の確認に際しては、F344ラットですでに検証済みの13物質で比較検討を行いました。その結果、ラット肝発がん物質はすべて的中し(9/9物質)、非変異発がん性物質も高い確率で発がん性を予測することができました(表2)。全体では13物質中11物質が正しく予測できたことから、本システムはSDラットの肝臓サンプルについても適応可能と判断しました。
| 物質 | 既知情報 | 発がん性予測結果 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 発がん性 | ラット肝 発がん性 | 変異原性 | F344ラット | SDラット | |
| 2,4-Diaminotoluene | + | + | + | 発がん | 発がん |
| Methyl carbamate | + | + | - | 発がん | 発がん |
| Thioacetamide | + | + | - | 発がん | 発がん |
| Urethane | + | + | - | 発がん | 発がん |
| D,L-Ethionine | + | + | - | 発がん | 発がん |
| Chlorendic acid | + | + | - | 発がん | 発がん |
| Clofibrate | + | + | - | 発がん | 発がん |
| Di(2-ethylhexyl)phthalate (DEHP) | + | + | - | 発がん | 発がん |
| 3-(p-Chlorophenyl)-1,1-dimethylurea | + | + | - | 発がん | 発がん |
| Di(2-ethylhexyl)adipate (DEHA) | + | + | - | 発がん | 非発がん |
| 2,6-Diaminotoluene | - | - | + | 非発がん | 非発がん |
| 2-Chloromethylpyridine HCl | - | - | + | 非発がん | 非発がん |
| Iodoform | - | - | + | 非発がん | 発がん |
(3) 14日間投与試験におけるGeneChipデータを用いた予測
本発がん性予測メニューは、より短期間の14日間投与の動物試験に適用できます。また、遺伝子発現量の測定にはGeneChip®を用いています。予備試験(用量設定試験)などで取得した肝臓サンプルを本予測メニューに適用することが可能になります。すでに取得されているGeneChip®データを本予測メニューに適用し、これまで取得したデータを有効活用することもできます。
サービス内容
当機構ではCARCINOscreen®で発がん性予測を行うのに必要な動物試験、マイクロアレイ測定、そして、マイクロアレイデータを用いた発がん性予測の一連の作業を実施することができます。一方、自社内で取得された動物試験の臓器サンプルをご提供いただき、マイクロアレイ実験より承ることも可能です。さらに、GeneChip®およびToxplusアレイを用いた遺伝子発現データの測定まで自社内で実施され、マイクロアレイデータのみご提出いただくことでも対応しています。お気軽にご相談ください。

| 1) 解析プランのご提示 | お客様のデータ解析目的や実験系に応じたプランニングを行います。 |
|---|---|
| 2) お見積書の作成 | 解析プランに沿ったお見積書をご提示します。 |
| 3) お客様からのサンプルもしくは データファイルの送付 | 受託解析をスタートされる試験項目に応じて、被験物質、組織(RNA later保存)、total RNA、データファイルをご送付ください。 |
| 4) 動物実験/アレイ実験/発がん性予測 | 解析プランに沿った実験を実施します。 |
| 5) お客様への解析データ納品 | 実験ごとに報告書を作成するとともに、各種データをお送りします。 |
必要に応じてお客様とのDiscussionを行います。
納品物/納期
報告書(印刷物)以外に以下のデータを電子ファイルとして納品します。なお、報告書の記載内容には(要約)、目的、方法、結果(考察)を含みます。
| 納品物 | (1)試験報告書(PDFファイル) (2)画像ファイル(TIFFファイル) (3)予測スコア等出力ファイル(Excelファイル) (4)遺伝子ネットワーク図(JPEGファイル) |
|---|---|
| 納期 | お問い合わせください。 (ご依頼内容およびご依頼時期によって決定します。) |
価格
本解析の価格に関しましては、当機構までお問い合わせください。
お問い合わせ先はこちら。
お申し込み方法
- ご依頼の目的など、こちらのフォームより可能な限り詳しくお知らせください。具体的な解析内容については、お客様とご相談の上決定させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。
- その他一般的なご依頼・ご相談手順についてはこちらをご覧ください。
- ご相談の内容に基づき、費用・納期等をお知らせします。
- お見積もり内容にご承諾いただけましたら、契約手続きに入らせていただきます。
開発の経緯
当機構(CERI)は、NEDOのトキシコゲノミクスプロジェクト* (リーダー:名古屋市立大学 白井智之教授)に参画し、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析に基づく短期間・低コストの発がん性予測手法を開発しました。また、当プロジェクトで取得したマイクロアレイデータはNCBI (National Center for Biotechnology Information;米国立生物工学情報センター)のGEO (Gene Expression Omnibus)データベースに登録していますので、ご興味のある方は右記のリンクをご参照ください(3日間投与後データ、14日間投与後データ、28日間投与後データ)。
本研究成果を基にCERI独自の取り組みによって短期間かつ高精度に予測可能な発がん性スクリーニング法;CARCINOscreen®(商品名:カルシノスクリーン)として実用化し、2010年度より受託解析を開始しています。
*独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) 受託事業
- 「高精度・簡易有害性(ハザード)評価システム開発」プロジェクト(平成13年度~17年度)
- 「高機能簡易型有害性評価手法の開発/遺伝子発現解析技術を用いた発がん性予測手法の開発」プロジェクト(平成18年度)
データ解析例
解析例(1)
タイトル
SDラット用いた28日間反復投与試験に対する発がん性予測システム(CARCINOscreenR)の適用性
研究目的および方法
F344ラット(28日間反復投与試験)から取得した遺伝子発現データで構築した発がん性予測システム(CARCINOscreen®)について、SDラットから取得した遺伝子発現データが適用できるかを調べるために以下のような検討を行いました。
方法としては、SDラットを用いて28日間の反復投与実験を行った後、肝臓からtotal RNAを抽出した後、Whole Rat Genome Toxplusを用いて遺伝子発現データを取得しました。引き続き、発がん性予測システム(CARCINOscreen®)に遺伝子発現データをインプットして予測スコアを得た後、既知の発現性情報とどの程度一致するかについて検証しました。
| 動物 | Crlj:CD (SD)ラット、雄 |
|---|---|
| 投与 | 28日間反復投与(強制経口投与) |
| 群構成 | 媒体対照群、低用量群、高用量群 (4匹/1群) |
| 解析臓器 | 肝臓 |
| マイクロアレイ | Whole Rat Genome Toxplus (Agilent) |
| 既知情報 | 物質名 |
|---|---|
| 変異発がん性 (C+M+) | ・2,4-Diaminotoluene* |
| 非変異発がん性 (C+M-) | ・Thioacetamide* ・Di(2-ethylhexyl)phthalate* ・Clofibrate* ・D,L-Ethionine* ・Di(2-ethylhexyl)adipate** ・Chlorendic acid*, ・Urethane* ・Methyl carbamate* ・3-(p-Chlorophenyl)-1,1-dimethylu* |
| 変異非発がん性 (C-M+) | ・Iodoform ・2-Chloromethylpyridine HCl ・2,6-Diaminotoluene |
*:ラット肝臓が標的、**:マウス肝臓が標的
結果
それぞれの化合物について28日間反復投与後の肝臓の遺伝子発現プロファイルをWhole Rat Genome Toxplusを用いて取得し、そのデータをCARCINOscreen®に適用して発がん性予測を行いました。その結果、ラット肝臓を標的とする発がん物質の予測結果は、既知の発がん性とすべて一致しました(図1)。しかし、マウスの肝臓で発がん性を示すDi(2-ethylhexyl)adipateは、スコア値が低く非発がん物質と予測されました(図1)。また、非発がん物質であるIodoformは発がん性ありと判定されました(図1)。
以上の結果から、本予測手法は28日間のSDラットのデータについて、ラットの肝臓を標的臓器とする発がん物質について予測可能であることが確認できました。

〔28日間反復投与、SDラット、肝臓、高用量群〕
棒グラフが正の値を示すときは「発がん性有り」、負の値を示すときは「発がん性なし」となる。
解析例(2)
タイトル
SDラット用いた14日間反復投与試験に対する発がん性予測システム(CARCINOscreen®)の適用性
研究目的および方法
F344ラット(28日間反復投与試験)から取得した遺伝子発現データで構築した発がん性予測システム(CARCINOscreen®)について、SDラットから取得した遺伝子発現データが適用できるか、さらに14日間投与と短い投与期間で得られたデータをどこまで予測できるかを調べるために以下のような検討しました。
方法としては、SDラットを用いて14日間の反復投与実験を行った後、肝臓からtotal RNAを抽出した後、Whole Rat Genome Toxplusを用いて遺伝子発現データを取得しました。引き続き、発がん性予測システム(CARCINOscreenR)に遺伝子発現データをインプットして予測スコアを得た後、既知の発現性情報とどの程度一致するかについて検証しました。
| 動物 | Crlj:CD (SD)ラット、雄 |
|---|---|
| 投与 | 14日間反復投与(強制経口投与) |
| 群構成 | 媒体対照群、低用量群、高用量群 (4匹/1群) |
| 解析臓器 | 肝臓 |
| マイクロアレイ | Whole Rat Genome Toxplus (Agilent) |
| 既知情報 | 物質名 |
|---|---|
| 変異発がん性 (C+M+) | ・2,4-Diaminotoluene* |
| 非変異発がん性 (C+M-) | ・Thioacetamide* ・Di(2-ethylhexyl)phthalate* ・Clofibrate* ・D,L-Ethionine* ・Di(2-ethylhexyl)adipate** ・Chlorendic acid, ・Urethane ・Methyl carbamate* ・3-(p-Chlorophenyl)-1,1-dimethylu* |
| 変異非発がん性 (C-M+) | ・Iodoform ・2-Chloromethylpyridine HCl 2,6-Diaminotoluene |
*:ラット肝臓が標的、**:マウス肝臓が標的
結果
それぞれの化合物について14日間反復投与後の肝臓の遺伝子発現プロファイルをWhole Rat Genome Toxplusを用いて取得し、そのデータをCARCINOscreen®に適用して発がん性予測を行いました。その結果、ラット肝臓を標的とする発がん物質の予測結果は、既知の発がん性とすべて一致しました(図2)。しかし、マウスの肝臓で発がん性を示すDi(2-ethylhexyl)adipateは、スコア値が低く非発がん物質と予測されました(図2)。非発がん物質についてもいずれも既存の発がん性と予測結果が一致しました(図2)。
以上の結果から、本予測手法は14日間のSDラットのデータについて、ラットの肝臓を標的臓器とする発がん物質ならびに非発がん物質について予測可能であることが確認できました。

〔14日間反復投与、SDラット、肝臓、高用量群〕
棒グラフが正の値を示すときは「発がん性有り」、負の値を示すときは「発がん性なし」となる。