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発がん性予測手法開発への取組

1)はじめに

■発がん性試験について

 がんは、日本人の死亡原因の第一位にあげられており、イギリスの疫学者Dollらは、ヒトがんの発生原因の約80%は環境中に存在する化学物質であるという説を出しております*1。 化学物質の発がん性ポテンシャルを評価し、適正な使用をすることががんの一次予防として重要であることから、ヒトが直接摂取する医薬品だけでなく、環境中 に放出される可能性がある農薬や一般工業化学品についても、発がん性を事前に評価し、発がんリスク評価をすることがそれぞれ関連する法規で定められています。
 現在、実験動物を用いた種々の発がん性試験が数多く実施されています。特にヒトに対して発がん性があることの証拠の一つとして「実験動物に対する発がん 性」の有無がその指標として重要視され、実質的にラットやマウスなどを用いた「長期発がん性試験」が化学物質の発がん性の最終的な確認試験として用いられ ています。しかしながら、長い試験期間と多額の費用が大きな負担となるだけではなく、多数の試験動物を用いることから動物愛護の観点から問題とされており ます。従来の発がん性試験よりも低コスト・短期間で実施可能な発がん性予測法を開発することにより、早期にかつ多くの物質について発がん性情報を収集可能 とすることは非常に重要な課題となっています。

*1 J Natl Cancer Inst. 1981 66(6):1191-308.

■トキシコゲノミクスについて

 近年、ヒトを始めとしたさまざまな生物のゲノムの解析が終了し、遺伝子からの生命 現象の解明へと繋がっています。この中でトキシコゲノミクスは、toxicology(毒性学)とgenomics(ゲノミクス)を合わせた造語で、遺伝 子レベルで毒性等を解明する研究分野であります。
 トキシコゲノミクスでは、化学物質の暴露等による毒性や副作用が引き起こされる臓器の遺伝子発現を網羅的に測定し、毒性や副作用に関連して発現変動する 遺伝子を特定することが重要です。この網羅的遺伝子発現の測定にはマイクロアレイが使用されます。

■短期発がん性予測法について

 遺伝子発現変動は化学物質暴露等に対する細胞の最初の反応であり、生物種によらず 共通性を有していると考えられます。したがって、トキシコゲノミクス手法を用いることによりメカニズムベースでの毒性評価が可能となり、種間差を克服した 短期の毒性評価法の開発に繋がることが期待されています。
 トキシコゲノミクスを用いた化学物質の毒性予測に関しては、最近ではKiyosawaら*2が ラットの肝臓サンプルや肝細胞から取得した膨大なトキシコゲノミクスデータをデータベース化し、そのデータベースから選定したマーカー遺伝子の発現データ を基にした予測法によって毒性を起こす化合物の検出について報告されています。また、発がん性予測については、Tsujimuraら*3がラット肝の培養細胞を用いた方法について報告しています。また、米国EPAのToxCast programにおいても、トキシコゲノミクス手法を用いて発がん性を含めた様々な毒性の予測が試みられています。

*2 J Toxicol Sci 31:433-448.
*3 Cancer Sci 97:1002-1010.